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「光の詩」展
フォトグラフ(Photograph)には、「光の描くもの」という意味がある。この原初的な意味合いに最も近い技法がフォトグラムであろう。写真機を使 わないで、印画紙上に直接ものを置き、光を当てて画像を得る。簡単に単純な解説はできるが、実は作家自身、最後まで画像がどう浮かび上がるのか、わからな い。試行錯誤を楽しみながら西村陽一郎は光の芸術の気まぐれを、そこに流れる詩(うた)を、叙事詩のようにつむぎあげて作品化してきた。月日をかけて工夫 を凝らして織り上げられた極上のタピストリーのように、彼の芸術は壁面から光彩を放ち、妖しい魅力のとりことする。ターゲットはあなただ。「単純なものほ ど偉大である。」という芸術に関する格言をまつまでもなく、この作家の世界は写真芸術の異彩な宝なのだ。未見の美を創造し、すくいあげて、われわれの眼前 に定着した。今、その空間から、滲み出すユートピアへの情熱を手にしてみる愉悦……。
(2015年 企画 石井仁志)
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