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 この作品集『青い花』には、私がここ7,8年の暮らしの中で出会った身近な花々の写真19種類84点が収録されています。大半は私が道端で拾ったり摘んだりしたものですが、中にはご近所の方が下さったり、妻の生け花の花材として我が家にやってきたものもあります。

 さて、それにしても青いタンポポやチューリップなんて見たことがないし、聞いたこともない、と不思議に思われた方もいるかもしれません。確かにその通りで、写真に写った花々は、元は赤や黄色をしていました。

 それがどうして青い花になったのかというと、花の色彩や明暗を反転させて写しているからです。反転により、赤や黄色の暖色系の花は、寒色系の花に変わります。同時に明暗も逆になるため、光は暗い影となり、影は輝く光となって、闇の中に「青い花」が浮かび上がるのです。

 普段見慣れているはずの花々が、ここに写真の魔法をかけられ、全く新しい姿となって目の前に立ち現れます。神秘的な清らかさと同時にえもいわれぬ妖しさが同居するその不思議な美しさに、私は魅了されてしまいました。

 現実のすぐ裏側に広がっている幻想的な花々の世界を、皆様も共に楽しんでいただけたら幸いです。

 

 なお、『青い花』の制作にあたっては、たくさんの方々から多大なお力添えを頂きました。写真家の森山大道さん、写真評論家の飯沢耕太郎さんには、身にあまるお言葉を頂戴しました。これからも精進したいと思います。お忙しい中、翻訳を快く引き受けてくださった河田展子さん、ありがとうございました。またこの本をひとつの「作品」とすることができたのは、プリンティングアーツディレクターの熊倉桂三さんの卓越した技術のおかげです。きめ細やかなお仕事で支えてくださった山田写真製版所の澤崎達雄さん、本当にありがとうございました。

 そして、作品集を制作する機会をくださった鎌倉現代の杉田勝敏さん、より良いものを作ろうと奮闘してくれた田森葉一さんに、心から感謝申し上げます。その他、牧野嘉文さんにも有益な助言をいただきました。

 最後になりますが、私の妻であり詩人の新美亜希子と、私の作品をいつも楽しみにしてくれている娘たちにひとことお礼を述べさせてください。

 

2016年4月18日 逗子の自宅にて 西村陽一郎

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